2025.06.25
本シリーズでは、Power Automate Desktop※を活用して業務効率化に役立てる方法をご紹介しています。
前回は、エラーを防ぐためのフロー設計と、エラー発生時アクションを使って運用中のフローのエラーに対処する方法を解説しました。
今回は、「スロー エラー」を使って、フロー実行中に発生するエラーを適切に処理し、安全にフローを中断する方法を解説していきます。
サンプルフローも配布中!
※Power Automate Desktop (PAD)とは?
MicrosoftがWindows10/11ユーザー向けに無償で提供しているPC自動化ツールです。Windows11には最初からインストールされています。
プログラミングなしでPCの操作を自動化できます。
本コラムでは当ツールの活用方法をご紹介しています。
インストール方法はこちら
前回のコラムでも少し触れましたが、スロー エラーとは「緊急事態発生のサイン」を出すことです。
サインを出してその後の処理をストップします。
スロー エラーを使う場合、最終的に処理が止まることは決まっているので、「処理を止める前に何をするか」を設定していくことになります。
ここで一つ例を挙げて説明します。
PCの電源が突然切れてしまった時のことを考えてみましょう。
このようなとき、多くの方が心配するのは、
ではないでしょうか。
これを、プログラムで使われる「スロー エラー」という考え方で捉えてみます。
まず、「突然電源が切れる」という事象が発生したとします。
これは、プログラムでいうところの「スロー エラー」です。
つまり、PCが「何か異常が起きた!」というサインを出した状態です。
このサイン(スローされたエラー)を受け取ったプログラムは、それに応じた処理を実行します。
たとえば、
といった処理です。
こうしたエラー処理が完了した後に、電源が落ちます。
うまく処理が動作していれば、PCを再起動したときに直前の作業を復元することができ、何が原因だったのかも確認できます。
つまり、スロー エラーは「異常終了のサイン」であると同時に、「適切な対応をするチャンス」でもあるのです。
上記の例にもあるように、
PADでのスロー エラーの使い道は、主に2通りあります。
これらの処理を実行させることがスロー エラーの活用の仕方です。
次章では、PADでどのようにスロー エラーを活用していくのかを解説していきます。
まず、PADでスロー エラーを使う方法は2種類あります。
1つは、アクション1つ1つに設定する方法
もう1つは、複数のアクションをひと塊にして、その塊に対して設定するという方法です。
ブロックエラーは後者の方法に当たります。
アクション一つ一つに設定する方法は前回コラムで扱っていますので、
気になる方はそちらもぜひご確認ください。
フローコントロールの中からブロックエラーアクションを選択してみます。
すると、他のアクションでエラー発生時を選択したときのようなダイアログが表示されます。
パラメータは「エラー発生時」を選択したときとほぼ同じです。
(詳しくは前回コラムを参照)
唯一違うのが、名前を付けられる点です。
つけた名前は、フロー編集ウィンドウに表示されます。
なにも設定せずにアクションを配置した場合、以下のように表示されます。
「ブロックエラー発生時」と「End」の間に挟まれているアクションでエラーが発生したときに、ブロックエラー発生時アクションに設定した内容が実行されます。
では、次章から具体例を挙げて解説していきます。
ここからは、ExcelからExcelへの転記作業を例にサンプルフローを作成していきます。
フローの概要
スロー エラーの設定
全体像は以下のようになります。
「ブロックエラー発生時」アクションは、データの各行への処理に対して設定しています。
フローの先頭でエラーが発生した場合は、フロー実行ボタンをクリックした時点で気付くことができるので、その場での対処が容易です。
また、Excelを保存する段階でのエラーは、「エクセルを閉じる」アクションに例外処理を設定すれば十分です。
では、「ブロックエラー発生時」アクションでどのような設定をしているのか見ていきます。
「新しいルール」を2つ作成しています。
これら①~②の処理を実行後、スローエラーでフローを中断します。
使っているアクションは3つです。
前回エラーの内容も保存されるよう、「新しい行を追加する」「内容を追加する」にチェックを入れます。
使っているアクションは2つです。
ブロックエラー発生時にこれらのサブフローが実行されることで、フロー中断による損害を最小限に抑えることができます。
ここまで、エラー発生時の設定について解説してきましたが、予期せぬエラーに備えることで以下のような効果が期待できます。
エラー原因の特定が難しいと、業務の再開に多くの時間を要する場合があります。
特にITリテラシーが高くない人が状況を伝える場合、情報伝達の齟齬によって原因の特定が遅れることもあります。
しかし、エラーの発生場所と内容が明確になっていれば、簡単なマニュアルだけで誰でも対応でき、属人化を防ぐことが可能です。
また、エラー発生時の状況を記録していないと、それまでの作業が無駄になってしまいます。
例えば、1時間かかる処理で50分経過した時点でエラーが起きても、記録があれば10分で再開可能ですが、なければまた1時間かかります。
こうした無駄を防ぐためにも、エラー処理の実装は非常に重要です。
もし、現在運用中のフローに例外処理が入っていない場合は、ぜひ今回のサンプルフローを参考にしてみてください。
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記事を書いた人
株式会社ワイ・ビー・シー
営業部 開発チーム
白川
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