コラム - お役立ち情報

2022.06.24

「Web診療圏分析」に「院長名」や「出身大学」などの医師の「個人情報」を搭載しようとして断念した話

はじめに

今回のコラムは、開業を検討しているドクターへの情報提供ツールとして好評いただいている診療圏分析システム「MAP-STAR Web診療圏分析※」(以後「Web診療圏分析」といいます)個人データの搭載を検討した際のお話です。
 

※「MAP-STAR Web診療圏分析」:人口統計や医療機関データを用いて新規クリニック開業地の立地調査をするシステムです。来院患者予測数や近隣の競合医療機関情報などが記載された「診療圏調査報告書」が作成でき、新規開業を予定しているドクターへの情報提供ツールとしてクリニック開業支援の現場で活躍しています。
製品紹介ページ:https://www.ybcdoc.com/lineup/map-star-webshinryoken/

 
これまでWeb診療圏分析ユーザー(以後「ユーザー」といいます)より多く寄せられた要望に「Web診療圏分析」で使用されるデータに競合施設の「院長名」「院長の出身大学」「管理者氏名」などの項目※1を追加して欲しい、というものがありました。
その要望を受け、弊社では当該項目の搭載を目標に調査・検討を重ねてきましたが、結果として断念せざるを得ないという結論に至りました。
次章からは、その背景や経緯をお話ししていきます。

※1 公共機関や医療機関のウェブサイトなどから取得できる範囲の項目です

個人データの提供って悪いこと?

先に挙げた「院長名」などの個人情報を含むデータは「個人情報保護法」(正式名称は「個人情報の保護に関する法律」)で定められた「個人データ」に該当します。そのため、Web診療圏分析のようなシステムを介して個人データを第三者であるユーザーに提供する事は個人情報保護法の規制を受けることになります。
個人データの提供」と言えば聞こえが悪いかもしれませんが、個人情報保護法にある規定に則った上で行うのであれば、個人データを第三者へ提供すること自体は違法なことではありません。

その規定とは「オプトアウト規定」と呼ばれるものです。
個人データの第三者への提供は原則「本人の同意を得て」行われるものですが、例外的に本人の求めに応じて個人データの提供を停止することを条件に、本人の同意なしで第三者提供できる条件がオプトアウト規定として定められています。

出典:「民間事業者向け 個人情報保護法 ハンドブック」(個人情報保護委員会作成)から引用

オプトアウト規定においては、
 ・本人の求めに応じて個人データの第三者提供を停止することにしていること
 ・個人情報保護法が定める事項を、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くこと
  (「容易に知り得る」とは、ウェブサイトのわかりやすい場所に必要な情報を掲載することなどが該当します)
 ・個人情報保護委員会へ届出を行うこと
などが第三者提供の条件となります。※2
当初、弊社でも上記のオプトアウト規定に基づき、個人情報保護委員会への「オプトアウトの届出」を行うことで、Web診療圏分析における「院長名」などの個人データの提供を検討していました。

※2 オプトアウト規定の詳細は個人情報保護委員会ウェブサイトなどでご確認ください


改正個人情報保護法により個人データの提供を断念

先に申し上げたことですが、弊社では「院長名」などの個人データの提供を断念することとなりました。
その理由が2022年4月1日に施行された「改正 個人情報保護法」によるものです。

改正後の個人情報保護法ではオプトアウト規定に関する規制が強化されました。
その規制のうちの一つが「オプトアウト規定により提供された個人情報の、オプトアウト規定による第三者提供を禁止する」というものです。(図1)


出典:「オプトアウト提供の変更に関する概要資料」(個人情報保護委員会作成)から引用
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/revised_optout_overview.pdf

この条件を弊社サービス「Web診療圏分析」に当てはめてみます。
Web診療圏分析では医療機関データの情報精度の観点から、医療機関データを専門に扱う「データ会社」より提供を受けています。
そのため、
 ①データ会社がオプトアウト規定に基づき収集した個人データを弊社に第三者提供する
ここまでは改正法においても問題がないのですが、
 ②オプトアウト規定に基づきデータ会社から提供を受けた個人データを、弊社がオプトアウト規定に基づきユーザーへ第三者提供する
上記②の点が法改正により禁止となりました。(図2)

また、仮定の話となりますが、何らかの方法で弊社からユーザーへの個人データ提供がクリアできた場合であっても、Web診療圏分析の性質上、競合医院の情報として「院長名」を含んだWeb診療圏分析内の競合医院のリストをユーザーからドクターへ提供することが想定されます。この場合当該リストが個人データであり、オプトアウト規定の禁止事項に抵触することとなるため、ユーザーによる意図しない法令違反を誘発してしまう懸念もありました。(図3)

そのため、要望をお寄せいただいたユーザーのみなさまには心苦しい限りですが、
 •弊社は、オプトアウト規定により取得した個人データをユーザーへ第三者提供できないこと
 •ユーザーからドクターへ個人データ提供が行われる場合もオプトアウト規定による禁止事項の対象になること

上記の観点より、弊社ではWeb診療圏分析への個人データの搭載を断念するに至りました。

貴社にある個人データは大丈夫?

ここまで、弊社が「院長名」などの個人データの提供を断念するに至った経緯をお話ししてきました。

ここからは少々余談となりますが、本コラムをご覧いただいているみなさまも、業務の中で営業リストや販促情報として個人データを購入することや、他社から提供を受けることもあるのではないでしょうか。
先に説明した「オプトアウトの届出」については個人情報保護委員会のウェブサイトにて閲覧ができるため、データ提供元がオプトアウト規定に基づき、適正なデータ提供を行っているか確認が可能です。

オプトアウト届出書検索(個人情報保護委員会ウェブサイト)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/preparation/optout/publication_2021/

企業コンプライスが重視される昨今、みなさまが手にしている個人データがオプトアウト規定に基づき適正に収集・提供されたデータであるか、といった点についても気を付けるべきかもしれません。
個人情報保護委員会のウェブサイトでは個人情報保護法についてのガイドラインや資料等が公開されています。
不意の法令違反を防ぐためにも、ぜひ一度ご確認いただくことをおすすめします。