コラム - お役立ち情報

2025.08.27

Power Automate Desktop(PAD)活用事例 
PowerFxで変数操作

本シリーズでは、Power Automate Desktop※を活用して業務効率化に役立てる方法をご紹介しています。
今回は、PADをより柔軟かつ高度に活用するためのキーワード「Power Fx(パワー エフエックス)」について解説します。
Power Fxは、Microsoftが提供するローコード向けの数式言語で、PADでも一部のアクションで活用できるようになりました。
「条件に応じて値を変えたい」「文字列を加工したい」といったニーズに応え、これまで以上に表現力のあるフローが作れるようになります
一見難しそうに見えるPower Fxですが、実はExcel関数に非常によく似ており、初めて触れる方でも比較的スムーズに使い始めることができます。
このコラムでは、Power Fxの概要と特徴を整理しつつ、PADでの使いどころや活用のヒントをわかりやすくご紹介していきます。

Power Fxを使ったサンプルフローを配布中

※Power Automate Desktop (PAD)とは?
MicrosoftがWindows10/11ユーザー向けに無償で提供しているPC自動化ツールです。Windows11には最初からインストールされています。
プログラミングなしでPCの操作を自動化できます。
本コラムでは当ツールの活用方法をご紹介しています。
インストール方法はこちら

目次

1.Power Fxとは?

2.Power Fxでできること

3.Excel関数との違いと親和性

4.Power Automate Desktopでの活用方法

5.まとめ

1. Power Fxとは?

Power Fx(パワー エフエックス)は、Microsoftが提供するローコード向け数式言語で、Power Platform製品(Power Apps、Power Automate、Dataverseなど)で使われています。
もともとはPower Appsでデータ処理や画面制御のために登場しましたが、Excelに似た書き方と直感的な構文が評価され、Power AutomateやPower Pagesなどへも活用の場が広がっています。
PADでも一部のアクションでPower Fxが使えるようになっており、特に「変数の設定」「条件分岐」などで威力を発揮します。
例えば次のようなことが可能です:

  • ・条件に応じて異なる値を代入
  • ・日付を自動計算
  • ・数値を見やすく整形
  • ・複数の文字列を組み合わせ

関数と聞くと構えてしまうかもしれませんが、Excel関数に慣れている方ならすぐに使いこなせます。

2. Power Fxでできること

Power Fxを使うと、文字や数字、日付を自由に加工したり、条件に応じた判断を自動化できます。
文字を扱う
Power Fxでは文字列の結合や抽出が簡単にできます。

· Concatenate(“Hello”, ” “, “World”) → “Hello World”という文字にする
· Left(“ABCDE”, 3) → 左から3文字”ABC”だけ取り出す
· Len(“文字列”) → 文字数を数える(この例では3)

日付と時刻の操作
現在日時の取得や、日付の加減算なども柔軟に行えます。

· Now() → 現在の日時
· Today() → 本日の日付だけ
· DateAdd(Today(), 7) → 7日後の日付
· DateDiff(StartDate, EndDate) → 2つの日付の差(日数)

条件分岐
条件に応じた処理も、If関数などで簡単に記述できます。

· If(Score >= 80, “合格”, “不合格”)
 → スコアが80点以上なら「合格」、そうでなければ「不合格」と出す
· Switch(Status, “完了”, “処理済み”, “保留”, “対応待ち”, “未処理”)
 → 状態の種類によって、それぞれ違う言葉を表示する

その他の操作
· 数字を「¥12,345」などに見やすく整える
  Text(12345.678, “[$-ja-JP]¥#,##0”) → “¥12,346”

• 「中身が空かどうか」を確かめる
  !IsBlank(変数名) → 何か入っていれば「正しい」、空なら「間違い」

このように、Power Fxを使えば、文字や数字、日付などを自由に加工したり判断したりできます。
ふだんExcelを使っている方なら、「これ見たことあるな」という関数も多いと思います。

次は、Excelの関数とPower Fxの違いを比べながら、どんな場面で使いやすいかを紹介します。

3. Excel関数との違いと親和性

Power Fxは、見た目や使い方がExcelの関数ととてもよく似ています。
そのため、「Excelは使ったことがあるけど、フローの自動化は初めて」という方にも、なじみやすいしくみになっています。

似ているところ
· 関数名とかっこ()で書く
· 文字数カウントや日付整形など、よく使う機能が共通
· 記号やコードが少なく、初心者でも扱いやすい

異なるところ
· Excelはセルに書くが、Power Fxは「変数」や「パラメータ」に書く
· 表ではなく「処理の流れ」を動かすために使う
· Power Fxには専用関数(IsBlank, Switchなど)がある

置き換え例

Excel Power Fx 内容
IF(A1>0,"OK","NG") If(Value > 0, "OK", "NG") 数字が0より大きいかで分ける
TEXT(NOW(),"yyyy/mm/dd") Text(Now(),"yyyy/mm/dd") 今日の日時を「年/月/日」で出す
LEN(A1) Len(Value) 文字の長さを数える



このように、Power FxはExcelの関数に近いので、はじめてでも取り組みやすい言語です。
そして、Excelではできなかった「フローの中で条件に応じて動きを変える」といった使い方ができるのが、大きな違いでもあります。

次は、Power Automate Desktopで実際にPower Fxをどう使うのか、その方法や事例をご紹介します。

4. Power Automate Desktopでの活用方法

ここでは、Power FxをPower Automate Desktop(PAD)でどのように使うかについて、ご説明します。
Power FxはPADのすべての場面で使えるわけではありませんが、特定の操作の中で使うことで、フローの内容をより柔軟にできるようになります。

Power Fxの使い方
Power Fxを使用する際は、フロー作成時に「Power Fxが有効」にチェックを入れます。

こうすることで、この後のアクションのパラメータ設定時にPower Fxを使用可能になります。

では実際に使用例を見ていきます。
使い方は、パラメータ設定欄に『=』を書いてからPower Fxの関数を書きます。

① 変数の設定
変数に文字や数字を入れるとき、Power Fxで条件や計算式を使うことができます。
例:今日の日付を入れる

パラメータの設定
    値:=Text(Today(), "yyyy/MM/dd")
これで、変数に「2025/08/07」のような日付が入ります。

② 条件
Power Fxを使って「こうなったらAの処理、それ以外はBの処理」という分け方ができます。
例:変数の値が空(なにも入っていない)か調べる

パラメータの設定
    条件式:=IsBlank(Today)

このように書くと、変数の中が空かどうかを判断できます。

③ 入力されたデータを整える
たとえば、ユーザーから入力された金額に「¥」マークをつけて表示したり、
1つの文章に複数のデータを組み合わせたりするときに、Power Fxが使えます。
例:氏名と日付を合体させて1つの文字列にする

パラメータの設定
    値:=Concatenate("お名前:", "和井 菱雄", " 日付:", Today)

これで、メッセージボックスに「お名前: 和井 菱雄 日付: 2025/08/07」のような文字列が表示されます。

注意ポイント
    ・Power Fxを使う際は、変数名を%で囲む必要がありません。
    ・Power Fxの関数を使わない場合でも、パラメータの設定時は『=』を先頭に書きましょう。

5.まとめ

今回ご紹介した Power Fx は、Power Automate Desktop(PAD)のフローをより柔軟にするための“計算や条件づけの道具”です。
Excelの関数に似た書き方なので、Excelを使ったことがある方ならすぐに応用できます。

今回のポイント
    1. Power Fxとは
        ○ Excelの関数のように、文字・数字・日付を加工できる式のこと
    2. できること
        ○ 文字や日付の組み合わせ、条件分岐、計算、データ整形 など
    3. Excelとの違い
        ○ セルではなく「変数やパラメータ」に対して使う
        ○ フローの中で条件に応じた動きを作れる
    4. PADでの使い方
        ○ アクションのパラメータ欄に = を書いてからPower Fxを入力
        ○ 変数設定・条件分岐・データ整形に特に効果的

活用のコツ
● 「この処理、手作業で条件分けしているな…」と思ったらPower Fxで自動化できないか考えてみましょう
● まずはシンプルな式から試して、徐々に複雑な条件や組み合わせに挑戦すると失敗が少なくなります
● 関数の意味や使い方は、公式ドキュメントやExcelの関数一覧も参考になります

Power Fxを覚えると、単なる自動化だけでなく、“状況に応じた賢いフロー” が作れるようになります。
これにより、作業の無駄を減らし、エラーややり直しのリスクも下げられます。

今回紹介した内容を使ったサンプルフローを用意しました

ダウンロードして、実際にPAD上で動かしながら試してみてください。
自分の業務に合わせて少しずつカスタマイズすれば、すぐに実践投入できます。

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 記事を書いた人
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 株式会社ワイ・ビー・シー
 営業部 開発チーム
 白川
 



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